e-妊娠top 不妊治療と不妊症 多嚢胞性卵巣症候群 腹腔鏡下卵巣焼灼術(ラパロドリリング)

腹腔鏡下卵巣焼灼術(ラパロドリリング)

カタバミ
基礎体温チェック
基礎体温作成

←こんな基礎体温表を簡単作成。自分の基礎体温と妊娠した人たちとのシンクロ検索が可能

Laparoscopic ovarian drilling

多嚢胞性卵巣(PCO)の治療法の1つに、腹腔鏡下卵巣焼灼術(Laparoscopic ovarian drilling)という外科的治療があります。これは腹腔鏡下でレーザーか電気メスを使い、左右の卵巣にそれぞれに「5~10ミリくらいの穴を20ヶ所程度開ける」という治療法です。

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の外科的治療は、以前は開腹手術(卵巣楔状切除術)が行なわれていましたが、手術侵襲(手術が体に与えるリスク→組織の破壊、出血、精神的負担など)に加えて、術後の癒着が新たな不妊原因になることが懸念されていました。

そのためクロミフェン療法(クロミッド、セロフェンなど)、あるいはゴナドトロピン療法(hMG-hCG療法)が導入されると開腹手術は選択されることが少なくなりました。

しかし腹腔鏡手術(ラパロ)の発達により新たに見直されたのが、この腹腔鏡下卵巣焼灼術です。開腹手術と違い手術侵襲が少ないこと、癒着が軽度なことで外科的治療としてのデメリットが軽減されています。

腹腔鏡

腹腔鏡下の手術不妊治療ガイダンス第3版より引用)

腹腔鏡下卵巣焼灼術のメリットとデメリット

腹腔鏡下卵巣焼灼術の1番のメリットは、術後半年から1年程度の期間は「排卵周期が回復する」ということです。薄くなった卵巣の表皮から排卵を期待できるのはもちろん、卵巣表皮切除によりPCOの原因とも言えるアンドロゲン(男性ホルモン)の生産を低下さることが出来ます。

これによりPCOの特徴である、LH(黄体形成ホルモン)の分泌が抑えられFSH(卵胞刺激ホルモン)とのバランスが整います。

腹腔鏡下卵巣焼灼術

術後のLHとFSHの変化今日の不妊診療から引用)

卵巣焼灼術後は排卵が回復し、必要以上に薬(hMG-hCG療法など)を投与する事が少なくなり、PCOSの最も注意すべきOHSS(卵巣過剰刺激症候群)の発症率を抑えられるのが最大のメリットと言えるでしょう。

また強い薬を投与しないで済むということは、多胎妊娠の確率を少なくする効果もあります。さらにPCOの人の最大の悩みである「今周期は、無事に排卵してくれるか?」という不安(ストレス)が、かなり軽減されます。

しかし卵巣焼灼術にも、もちろんデメリットがあります。まずあげられることは、術後の効果(メリット)を期待できる期間が1年程度しかなく、半永久的ではないということです。

また手術を受けることは、いろいろな面で大きな負担がかかります。費用面、精神面、入院日数、おなかに残る傷跡などを考えると決断には大きな勇気が必要でしょう。

「手術」は万が一の可能性や術後のリスクなども考える必要があり、このあたりがゴナドトロピン療法に比べて、積極的に選択されない理由になっているようです。

腹腔鏡下卵巣焼灼術体験

妊娠掲示板に書き込んでくれた「にゃごにゃごさん」の体験談です

不妊原因

PCO(多のう胞性卵巣)

卵胞は育つものの、卵巣の膜が厚くて破れにくい為、排卵がしずらい。
排卵しないと益々、膜が厚くなり排卵しにくい状態になっていく。
排卵しないため、卵巣の中に排卵しなかった卵胞が溜まったりする。

年齢

現在38歳(1回めのラパロ手術時32歳:2回目37歳)

腹腔鏡下卵巣焼灼術までの経緯

①クロミッド(排卵誘発剤)・ディファストン(黄体ホルモン)の服用・・・約半年間
②HMG注射・HCG注射療法・・・半年間

※排卵誘発剤で卵胞はたくさん育つものの、排卵するときもあれば、膜が破れにくい為、排卵しない時もある。 排卵している月もあるのに妊娠しない為、他にもまだ発見していない不妊原因があるのか心配なまま治療を続けていたが、OHSSを起こし、入院。

腹腔鏡下卵巣焼灼術決断のきっかけ

●このまま、排卵誘発剤を使った治療を続けていても、PCOの患者はOHSSの危険が高い。
●ラパロ(腹腔鏡手術)で、卵巣の膜に多数の穴をレーザーで開ける治療をすると、 半年間~1年の間、膜が破れやすくなり、排卵しやすくなる。(ゴールデン期間)
●ラパロ(腹腔鏡手術)で今までの検査で発見できなかった不妊原因を見つけることができる。 子宮筋腫、内膜症、卵管の癒着、卵巣の状態等、実際に医者が肉眼で確認でき、その場で、癒着をはがすなど、直接的な治療を受けることができる。

※以上の点から、ラパロを決断する。

腹腔鏡下卵巣焼灼術決定から手術までの期間

約2週間後、生理期間をさけて実施。

手術内容

手術時間:30分程度
入院期間:1週間
費 用:約12万円(保険適用3割負担)

入院中の生活

①1日め:

腸の中をからっぽにする為、腸内洗浄の薬水2Lを飲み、下剤を使用。水便になるまで続ける。食事制限あり。

→下剤だけを使用するなど、内容は病院によりますが、私が入院した病院では、 ラパロ(腹腔鏡手術)の事故を防ぐ為、徹底的に腸を洗浄する方針でした。

※夜でも下痢の症状が続くので、個人的には大変でした。

②2日め:

手術前に剃毛・浣腸・入浴をすませる

手 術:腕からの点滴と背中から注射で麻酔全身
左右の下腹部とおへその3ヶ所を約1cmの穴を開けて手術

術 後:点滴:痛み止め:尿管が入った状態で就寝

※全身麻酔の為、夜は息がしにくい感じ、痛みはあまり感じないが、下腹部が動かず、自分の体ではない感じがしました。

③3日め:

流動食、尿管をはずす。ビデオで手術の内容を説明してもらう。

※下腹部にかなり痛みはあるが、トイレに行く等、歩行は可能。

④4日め:

通常食・通常生活ができる

※下腹部の痛みは日に日にびっくりするくらい、楽になります。

⑤5日め:

個人の状態により退院可能。私は保険給付の都合上7日間入院しました。

退院後の治療

生理がきてから、排卵前に受診。卵胞の大きさで排卵日を予測し、タイミング療法を指導される。 その後、生理が遅れ、妊娠検査薬で陽性。来院し、妊娠確定。

※ラパロ後、1回のタイミングで妊娠し、私も主治医の先生もびっくりしました。無事出産し、その子も、現在、元気な幼稚園児です。

2回目への挑戦

二人目を希望していたので、前回の成功体験をふまえ、ラパロを実施。
その後、7クール目を迎えていますが、残念ながら、現在、妊娠には至っていません。

卵胞は毎月1個ずつ育ち、排卵も毎月無事しているようですが、年齢が38歳と高齢な為なのか・・・、奮闘中です。

これから手術を受けようとする方へ

ラパロ(腹腔鏡手術)には、メリットとデメリットがあります。
メリットはラパロ決断のところで前述の通りです。
デメリットは全身麻酔のリスク。
穴を3ヶ所開けるので身体に傷跡が残る。

卵巣の膜に穴を開けても、自己治癒力があるため、効果が続くゴールデン期間は約1年程度と半永久的なものではない。

※私は、メリットだけを考え、デメリットについてはあまり気にしませんでした。 それよりも、今、自分ができることは全てやっているという満足感?みたいなものを優先させたような気がします。 実際、傷跡は時々つれるような痛みがある時もごくごくたまにありますが、戦利品として受け止めています。

私には成功体験もあり不成功体験もありますが、これから手術をご検討されている方の参考になれば、幸いです。私もこれからも頑張ります。

関連不妊用語

多嚢胞性卵巣症候群 腹腔鏡 卵巣 クロミフェン療法 クロミッド セロフェン ゴナドトロピン療法 排卵 アンドロゲン LH FSH OHSS 多胎妊娠 卵胞 デュファストン HCG HMG 排卵誘発剤 子宮内膜症 子宮筋腫

\ Pic Up /