マタニティ・ハラスメントとは、妊娠中や出産した女性に対する嫌がらせの総称です。主に「マタハラ」と略して呼ばれることが多いようです。
2014年度の新語・流行語大賞の候補に「マタハラ」が選出されていることからも、世間にマタニティ・ハラスメントという言葉が浸透しているとわかります。ここでは「マタハラ」と呼んで、マタニティ・ハラスメントの現状についてお話します。
マタハラは、妊娠中や出産した女性に対して、嫌な言葉を投げかけるだけではなく、意図的に肉体的な負担をかけることも含まれます。つまり、妊娠中や出産後だとわかっていながら言葉の暴力を投げかけたり、体を休めることを否定することなどが当てはまります。
例えば妊娠中の女性に対して、妊娠して職務を今まで通りできないからといって一方的に急な解雇をすることは、職場マタハラの疑いがあると考えられます。
それでも日本の職場環境は、「妊娠してすみません」と女性に言わせてしまいます。この言葉をいうときの心苦しさは、働く女性にとってツライものです。
職場で妊娠報告をしたとき「おめでとう」と言われるより先に「さて、どうしよう。困るよ」と答えるケースもあります。だから本当は妊娠して嬉しいのに「妊娠してすみません」と言わざるを得ないケースがあります。
特に妊娠・出産に縁遠い人の発言が目立ちます。これでは、仕事を継続しながら妊娠したいと思う女性が減ってしまいます。
会社側はどう考えているのでしょうか？やっと女性の社会的立場を尊重して、優秀な人材を育てたと思ったら「妊娠しました」という女性に、雇用者は妊娠を喜ぶどころか「ここまで育てたのに薄情」「仕事を舐めているのか」と思ってしまうケースもあるのです。
女性側は出産・子育てがひと段落すれば、職務に戻ることも考えたいのに、職務を甘く考えていたのかと判断されてしまうケースがあります。
そのうえ降格や退職を勧められるのはツライことです。これでは女性は妊娠を機に、仕事を手放すしかありません。せっかく身につけた知識や技能が、無駄になることは本人にとっても会社にとっても損です。
なかには妊娠をきっかけに、自主退職に誘導されるケースもあります。ハッキリと指示することはなくても、仕事内容や量が露骨に変わったり、大切な役割から外されて職場での必要性が目に見えて変わります。
職場に居ずらくなって、結果的には自主退職を選ぶのもマタハラの一種です。産休・育休を挟んで長期的な仕事をのぞんでいる女性にとって、妊娠・出産という限られた期間のためだけに不当な扱いを受けることは、とてもショックなことです。
マタハラが横行するような環境には、職場での妊婦にたいするガイドラインや会社全体での指導不足が目立ちます。妊婦に対しての対応が、個人の常識に委ねられていると、人それぞれ対応が異なってしまいます。
例えばつわりや体調不良で時短にしたいと申し出たとき、一時的な症状だと理解する人と、「妊婦だから許されると甘えている」と思う人もいるのです。
周囲の理解不足は、知らないあいだに妊婦を傷付けます。もしも職場に妊娠・出産に関わるガイドラインが徹底されていれば、平等な対応が期待できます。
妊娠中の働く女性へのガイドラインも必要だと感じています。妊娠中に働くということは周囲にどんな影響を与えたり、どんな助けが必要なのか理解する必要があります。
マタハラを受けるとき、どうしても受け身に徹してしまいませんか？泣き寝入りが多いのも現実です。
マタハラに関しては、妊婦自身も対応や考えかたを確認しておきたいです。どんな扱いを受けたらマタハラと考えるか、マタハラを避けるためにどんなことができるのか、受け身になるだけではなく、女性自身もマタハラが減らない実情に向き合っていきたいです。
残念ながら、妊娠中や出産した女性は、こうした嫌がらせを我慢する傾向にありました。ところが2014年10月の最高裁判所で、妊娠を理由に降格することについて、業務上の特別な理由などがない場合、本人の承諾なしに行うことは原則としてマタハラに当てはまると、初めて判断しました。
これまで、なぜか妊娠中や出産後の女性が弱い立場に立たされていましたが、最高裁の判断は、職場での不当な対応や嫌がらせに対して疑問を投げかけることのできる度台をつくりました。
マタハラを受けたからと言って、何でも訴訟をおこすことが適切かどうかは判断しかねますが、「マタハラを我慢することはないんだ！」という勇気を、マタハラで悩む多くの女性が感じたことでしょう。
